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(2) 非周期的なインパルス列 $f_{imp}(t)$ → 非周期的なアナログ信号 $f(t)$

先に進む前に(1)の逆経路について書いておきます。
いわゆるsincフィルターです。

非周期的なインパルス列 $f_{imp}(t)$ → 非周期的なアナログ信号 $f(t)$

$f(t)$ を非周期的な時間領域のアナログ信号とする。
また $f(t)$ をサンプリング間隔 $\tau$ [秒]、サンプリング角周波数 $w_s = 2\pi/\tau$ [rad/秒] でサンプリングして生成した非周期的なインパルス列を $f_{imp}(t)$ とする。

この時 $f(t)$ は $f_{imp}(t)$ と

\[ \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot t \right ) = \frac{ \sin \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot t \right ) }{\left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot t \right )} \]

の畳み込み演算により求まる。
ここで sinc は非正規化 sinc 関数である。
すなわち

\begin{align*} f(t) &= f_{imp}(t) * \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot t \right ) \\[10pt] &= \sum_{i=-\infty}^{\infty} f(i \cdot \tau) \cdot \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot (t - i \cdot \tau) \right ) \\[10pt] \end{align*}

※ 式中の * は畳み込み積分です。

サンプリング時にエイリアシングが発生していると完全復元は出来ませんので、今回はエイリアシングが発生していないと仮定して話を進めます。

詳しくは(6)の経路で説明しますが、インパルス列を元の信号に復元するためには周波数領域でスペクトルに矩形波をかけて切り出す、いわゆる理想ローパスフィルタ処理を行います。
矩形波の逆フーリエ変換はsinc関数ですので、時間領域ではsinc関数を畳み込むことに相当します。
よって

\begin{align*} f(t) &= f_{imp}(t) * \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot t \right ) \\[10pt] &= \int_{-\infty}^{\infty} f_{imp}(\xi) \cdot \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot (t - \xi) \right ) \ \textrm{d}\xi \\[10pt] &= \int_{-\infty}^{\infty} \sum_{i=-\infty}^{\infty} \ f(i \cdot \tau) \cdot \delta(\xi - i \cdot \tau ) \cdot \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot (t- \xi) \right ) \ \textrm{d}\xi \\[10pt] (\text{積分と無限級数を入れ替え(注)}) &= \sum_{i=-\infty}^{\infty} \left [ f(i \cdot \tau) \cdot \int_{-\infty}^{\infty} \delta(\xi - i \cdot \tau ) \cdot \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot (t - \xi) \right ) \ \textrm{d}\xi \right ] \\[10pt] (\text{デルタ関数の性質より}) &= \sum_{i=-\infty}^{\infty} f(i \cdot \tau) \cdot \textrm{sinc} \left ( \frac{\pi}{\tau} \cdot (t - i \cdot \tau) \right ) \\[10pt] \end{align*}

が得られます。

(注) 積分と無限級数は普通は入れ替え出来ないことに注意して下さい。デルタ関数の無限級数に関しては ポアソン和公式により積分と交換可能になっています。

参考までに例を示しましょう。


(6) $\textrm{DTFT}(w)$ → フーリエ変換 $\textrm{F}(w)$

サンプリング時にエイリアシングが発生しているとそもそも完全復元は不可能なので、エイリアシングが発生してないことが大前提となります。

$\textrm{DTFT}(s)$ → フーリエ変換 $\textrm{F}(w)$

$f(t)$ を非周期的な時間領域のアナログ信号とする。
$f[i]$ の DTFT を $\textrm{DTFT}(w)$ とする。

さらに $w_s = 2\pi/\tau$ [rad/秒] をサンプリング角周波数とした時、矩形状の窓関数

\[ \textrm{rect}(w) = \begin{cases} 0 \ & t \lt -\frac{w_s}{2} \\[10pt] 1 \ & -\frac{w_s}{2} \leq t \leq \frac{w_s}{2} \\[10pt] 0 & t \gt \frac{w_s}{2} \end{cases} \]

※ rect は rectangle(矩形) の略です。

を定義する。

サンプリング時にエイリアシングが発生していなければ、$f(t)$ のフーリエ変換は以下の式で表される。

\begin{align*} \textrm{F}(w) &= \textrm{DTFT}(w) \cdot \text{rect}(w) \end{align*}

つまり DTFT に対して理想ローパスフィルタ処理をすると $\textrm{F}(w)$ が復元されるというだけの話です。