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5. 伝達関数

3ページ目でお医者さんや八百屋さんは(アナログフィルタの)インパルス応答を聴いて患者やスイカの内部状態を調べていると書きました。
ただインパルス応答を直接調べるのは大変なので、一度 「伝達関数」と呼ばれる複素関数に変換してからフィルタの内部構造・状態・性質を調べた方が楽な場合が多いです。

まずディジタル線形時不変フィルタの伝達関数を H(z) で表すことにします。
この伝達関数の定義方法は 2 通りあって、まずはインパルス応答のZ変換を使って直接定義する方法です。

定義: 伝達関数の定義 その 1

あるディジタル線形時不変フィルタのインパルス応答h[i] とする。

h[i]Z変換 H(z) をそのフィルタの「伝達関数」と呼ぶ。

2つ目は前ページで説明したように畳込みの Z 変換から定義する方法です。

定義: 伝達関数の定義 その 2

y[i] ・・・ ディジタル線形時不変フィルタの出力ディジタル信号

x[i] ・・・ ディジタル線形時不変フィルタへの入力ディジタル信号

Y(z) ・・・y[i] の Z変換

X(z) ・・・x[i] の Z変換

の時、

H(z)=Y(z)X(z)

をそのフィルタの「伝達関数」と呼ぶ。


なお定義その 1 がその 2 から導かれる事は次のように簡単に証明できます。

(証明)

入力信号 x[i] がインパルス信号 δ[i] である時、インパルス信号の Z 変換は 1 なので

H(z)=Y(z)1=Y(z)

となる。
ここで出力信号 y[i] はインパルス応答 h[i] そのものであるので、伝達関数はインパルス応答の Z 変換となる (証明終)