複素フーリエ級数展開で扱っていた信号 $f(t)$ は周期が $\textrm{T}$ [秒] の周期的な時間領域アナログ信号でした。
ここでもし周期 $\textrm{T}$ を無限大に近づけたら $f(t)$ とその複素フーリエ係数と複素フーリエ級数展開はどう変化するでしょうか?

詳しくは次のページで説明しますが、周期が無限大に近づくと $f(t)$ は非周期的な信号に変わり、複素フーリエ係数はフーリエ変換と呼ばれる積分に変わり、複素フーリエ級数展開は逆フーリエ変換(またはフーリエ逆変化)と呼ばれる積分に変わります。

これらの定義は以下の通りです。

定義: フーリエ変換

非周期的な間領域アナログ信号 $f(t)$ が

(1) 区分的に連続で滑らかである

(2) 絶対可積分である

\[ \int_{-\infty}^{\infty} |f(t)| \textrm{d}t < \infty \]

という条件を満たすとき、以下の積分をフーリエ変換と言う。

\[ \textrm{F}(w) = \int_{-\infty}^{\infty} \left \{ f(t) \cdot \textrm{e}^{\{-j \cdot w \cdot t \}} \right \} \textrm{d}t \]

$\textrm{F}(w)$ の $w$ [rad/秒]は角周波数なので、要するに $f(t)$ を周波数領域信号(スペクトル)に変換しています。

なお「区分的に連続で滑らかである」信号とは

という意味で、(例外はありますけど)工学で良く扱う信号は大体その様な性質を持っています。

一方、$\textrm{F}(w)$ から元の $f(t)$ を復元する積分を逆フーリエ変換(またはフーリエ逆変換)と言って次の様に定義されます。

定義: 逆フーリエ変換(フーリエ逆変換)

$\textrm{F}(w)$ を $f(t)$ のフーリエ変換とする。
時刻 $t$ において $f(t)$ が連続ならば、以下の積分が収束して逆フーリエ変換(フーリエ逆変換)と言う。

\[ f(t) = \frac{1}{2\pi} \int_{-\infty}^{\infty} \left \{ \textrm{F}(w) \cdot \textrm{e}^{\{j \cdot w \cdot t \}} \right \} \ \textrm{d}w \]

なお $f(t)$ に不連続な点が含まれるときは次の事が言えます。

定義: 不連続点における逆フーリエ変換(フーリエ逆変換)

時刻 $t$ において $f(t)$ が不連続ならば、逆フーリエ変換は右極限 $f(t+0)$ と 左極限 $f(t-0)$ の平均に収束する。
つまり

\[ \frac{ f(t+0) + f(t-0) }{2} = \frac{1}{2\pi} \int_{-\infty}^{\infty} \left \{ \textrm{F}(w) \cdot \textrm{e}^{\{j \cdot w \cdot t \}} \right \} \ \textrm{d}w \]